今年9月のある金曜の夜。裸心プロジェクトが月2回主催する交流会『金曜の会』が、いつものように盛り上がる中、1つの記録が終わりを告げようとしていた。それは、金曜の会への21週連続参加という大記録(笑)。この時、記録の主は職場の慰安旅行のため、中標津・養老牛温泉にいた。心の中で彼女は思った。「阿寒湖温泉だったら車で参加したのに」…。今回の活き活き人は、この記録の持ち主である「尚ちゃん」こと、参加者の本間尚美さんに登場していただきます!

       第17回活き活き「人」本間尚美さん
 
 ― 「あたしのいない時に面白かったらどうしよう! 」 ―

第16回活き活き人 本間尚美さん






 昨年10月、日曜の朝の空気がまだ静かな釧路市内。高まる期待を胸に尚ちゃんは、女友達と1台のバスを待っていた。てっきり「オンボロの小さなマイクロバスが迎えに来ると思っていた」彼女らの前に、現れたのは28人乗りの立派な中型バス。「エェー、なぁに!?本物じゃない!」。大きなフロントガラスの向こうには、『裸心プロジェクト』と書かれたプレートが、さりげなく掲げられていた。裸心バスツアー『みんなでGO!GO!秋のグルメ&癒しの旅』である。

ツアーに参加した男女21人を乗せ、バスは一路十勝を目指す。レストラン『大草原の小さな家』(鹿追町)で賑やかにランチバイキングを取り、十勝エコロジーパーク(十勝川温泉)や、アイスクリームで知られる『ハピネスデーリィ』(池田町)などを経て、旅の終着地点はワイン城(同)。車中ではクイズ形式のゲームや、参加者の笑えるトークなどが次から次へと繰り広げられた。「みんな、ふだん仕事してるはずなのに、いつこんな企画考えたんだろう?」「遊び半分のプーさんじゃなくて、本格的な人たちの集まりなんだぁ」。共に裸心イベント初体験だった親友と、ドキドキワクワクしながら小さな大冒険を味わった尚ちゃんだが、さらに印象に残る出来事が、日帰りのツアーバスの中で起きたのだった。

きっかけはジャージを着込み、引率の教師役に扮したある裸心・男性スタッフが、途中下車し帰路につく参加者たちへ、感謝の拍手を送ったこと。「○○さん、お疲れさまでーす!!」。盛んな拍手の輪が自発的に車内に広がり、照れくさそうに降りていく一人ひとりを送り出していった。「ふだん忘れがちだけど、こういうことってすごく大事じゃないのかな」。ただ面白いだけじゃなく、いい人たち、いい集まりなんだ―。その夜開かれたツアー二次会にも、つい親友を引っ張って参加した尚ちゃん。すっかり遅くなった帰り道、この日出会った参加者たちの顔と名前を、2人でアレコレおさらいしながら家路についたという。

第16回活き活き人 本間尚美さん






それからの金曜の会に、常に尚ちゃんの姿があった。バスツアー直前に開かれた金曜の会が、実は彼女の裸心デビュー。「当日は余裕がなくてほとんど聞き役。ちゃんと自己紹介が言えず、他の人たちの方が面白かった。本当はサービス精神を発揮して、一言みんなを笑わせて挨拶を終わらせたかったのに」。参加者が名刺をくれたのにもビックリしたそう。「『エッ、なにこれ?』っていう不思議な感じ。自分は営業の仕事とかじゃないから、名刺を持っていなかった。すっごく嬉しくて、かっこいいなと思い、自分も名刺を作りました」。名刺が手元にドンドン増えるのが楽しくて、名刺入れも新たに買ってしまった。

「職場の人数はわずかだし、仕事で接する人は限られていたけれど、裸心の参加者は年齢も職業もバラバラ。今まで会ったこともない人たちと話すのが新鮮だった」。そんな彼女も、初めての金曜の会の前は「参加者の顔も年齢層も知らず、そんな中で落ち込んで寂しく帰ってくるのはイヤだな。気持ちは若いつもりでも、キャピキャピした若い子ばかりだったら、ノリについていけないのがこわい」と思った。さらに「初めの頃はただ参加するだけで、自分から溶け込めず、楽しんでなかった。『あたし、なにも話せなかった…』みたいなこともあり、反省したけれど、それを生かせず空振りに終わった時もある。でも、足を運んでいれば何かいいことがあった」。もちろん今は「楽しんでいます。楽しみながら参加し続け、たまたま『アレ?そういえば金曜の会を一度も休んでない』って気づいた」。イベントにも積極的に参加し「ほぼまんべんなく楽しんでます」。その原動力になったのは、「あたしのいない所で面白かったらどーしよう!」という思い。「なにか楽しいことがあるんじゃないかな」これが基本だ。

第16回活き活き人 本間尚美さん
あのバスツアーから約1年。今年9月末に行われた裸心・網走バスツアーに、尚ちゃんは「サブサポーター」というスタッフの立場で加わる。


ある裸心・女性スタッフは、今回彼女にサポーターをお願いしたワケをこう語る。「以前、あるイベントをスタッフ宅で企画していた時、居合わせた尚ちゃんがとってもイキイキした表情で、いろんなアイデアを出してくれ、『ふだんのリラックスした場でこそ彼女のよさが発揮されるんじゃないかな』と感じた。今回のバスツアーで、みんなにその魅力を少しでも知ってもらいたいなーと思った」。自分では普通のつもりなのに、なぜか周りからは「面白い」と言われる彼女の魅力。それをツアーで出してほしいというリクエストに、はじめは断った尚ちゃんだが、「(ツアーの)空気が柔らかになり、みんなに笑ってもらえたら」と、車内で出し物を担当するサポート役を引き受ける。当日は、1週間かけて手作りしたボード数十枚を使っての『頭を使ったトレーニングゲーム』を披露し、盛り上げ役として旅に色を添えた。無事ツアーが終わり、みんなから「よかったよ!」「楽しかったよ!」と言われ、「こんなことでそう言ってもらえるなんて」と嬉しかったそうだ。

バスツアー1ヵ月後の今年10月末には、裸心・南大通探訪ツアーのイベントリーダーも務める。市内米町で生まれ育ち、勤め先も南大通にある尚ちゃん。古きよき釧路の面影などを訪ねて歩き、地元のよさを再発見するガイド役に適任、と白羽の矢が立った。地元ゆかりの作家・石川啄木のスタンプラリーの台紙を用意したり、懇親会の会場であるお寿司屋さんに当夜のメニューを掛け合ったり。いざ本番では、参加者に「お母さん(みたい)」と言われた彼女(笑)。ツアー終了後、参加者たちから「ふだん、あんなイベントってないよね」「おもしろかったよ!」とメールをもらい、「これで楽しかったんだ。よかったぁ」とホッとしたそう。また機会があれば、裸心の企画を手助けしたいと思っている。

「尚ちゃんは輝いている」。裸心・網走バスツアーの直後に開かれた、バスツアー打ち上げ大会の席で、彼女はある裸心・女性スタッフからこう言われ、気恥ずかしかったという。「この1年で自分がどう変わったか、と言われても分からない。考え過ぎちゃう性格だし、マイナス指向という自覚があり、周りからもそう言われるので、全然深く考えずに今を楽しんでます」。尚ちゃんは、裸心参加1周年を過ぎた今の思いをこう語る。「初心を忘れず、まだ新人で行こう!」。参加して新たに見つけた自分もいる。「裸心のみんながあたしのオーバーアクションに気づき、拾っていじってくれた。『あっ、そうか。ドンドンいじってもらえばいいんだ』と思った」。実は彼女、1人でいることがイヤな人なのだ(笑)。

第16回活き活き人 本間尚美さん






自称・裸心の年長(組)さんである尚ちゃん。「裸心には若い人ばかりじゃなく、年長さんにも来てほしい。年を取っても一緒に楽しめる、こんないい場所があり、参加者もいい人ばかり。人と知り合う機会を求めて交流の場を探す転勤者の気持ちも、参加して初めて知った。みんなを楽しませてあげられたら」。金曜の会連続出場という記録は確かに終わった。だが、そこに楽しいことがあり、楽しませたい人がいるかぎり、尚ちゃんの時代(笑)はきっとまだまだ終わらない。
             
◎写真撮影・取材協力=千葉 志津子